食肉卸業者と実需がタッグを組み、和牛肉の売り込みを活発化させている。予算額が前年度比3倍以上に拡大した国の事業を活用し、食肉卸業者は和牛枝肉の調達を強め、低迷していた枝肉相場も上向く。高級部位の取り扱いを始めたり、和牛枝肉を一頭買いしたりする実需も出てきており、年度を通じた盛り上がりに期待がかかる。
農水省は、和牛の需要開拓に向け、食肉卸業者と小売りや外食といった実需者が連携した販売促進の取り組みを後押ししている。両者間でキャンペーンなどの計画を立ててもらい、実需者への販売量に応じて食肉卸業者に助成する。
物価高騰による和牛の消費低迷を踏まえ、2024年度の補正予算では前年度の3倍超となる170億円を措置。同省によると、「予算を大幅に増やしたが、それを超える多くの要望が来た」(食肉鶏卵課)という。

背景には、予算の増額による支援内容の拡充があるとみられる。例えば、食肉卸業者から実需者に販売された和牛のうち、ヒレやリブロースなどのロイン系部位では、1キロ当たり1800円の助成が受けられる。前年度では、同1600円で12・5%増額した。農畜産業振興機構(alic)によると、24年度のサーロインの平均卸値(A5・和牛去勢)は同約7000円だった。支援を活用することで、4分の1程度が賄われる。新たにロイン系以外の部位でも助成を受けられるようにし、同600円とした。
焼き肉店などへ和牛を販売する大手食肉メーカーは「3、4等級の取り扱いが多かった店が、5等級の和牛を買ってくれるようになった」と支援活用のメリットを語る。さらに、「新たに一頭買いを始めてくれた」(同)など、和牛の売り込みに期待がかかる。

低迷していた枝肉相場も回復傾向だ。建値となる東京食肉市場の5月の加重平均価格(A5・去勢、14日時点)は、前年比67円高の1キロ2558円。24年は1キロ200円程度前年を下回る月もあったが、支援活用の申請が集中した2月は前年並みにまで回復し、5月はもう一段上げている。
都内のスーパーでは、ブランドを指定した和牛販促フェアを開催するなど、年度を通じた盛り上がりに注目が集まる。
(廣田泉、森市優)